エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組) (2008/02/22) ジェラール・ドパルデュー、カトリーヌ・アレグレ 他 商品詳細を見る |
シャンソンに思い入れのない人でも、どっかで聞いたことはあるのがエディット・ピアフの名前。
とはいえ、ピアフって日本で有名な「愛の賛歌」とか「ばら色の人生」みたい流暢に歌い上げるような歌よりも、ダミ声の大声量で早口でまくし立てるような、ちょっとコミカルな歌い口で人気を博した人でもあるんですよね。
そんなピアフの生涯を、マリオン・コティヤールが演じてアカデミー賞を受賞したこの映画。
もう、コティヤールの演技に、心底感服です。
「世界で一番不幸せな私」「プロバンスの贈り物」の、あの女優さんとは思えません。えらい! これぞ女優魂だと思います。
ピアフとは、こういう若手の女優に心血を注いで演じたくさせる存在でもあるのだと思います。それだけ、フランス人の心の中に、パリという町の象徴として生き続けている存在、ピアフ。
日本では副題で「愛の讃歌」と入っていますが
原題は
La Mome
小さな小雀といういみの ラモーム・ピアフ
彼女の最初の芸名で愛称でもあったラモームというのが原題で
映画の中でも、愛の賛歌はテーマにはなっていません。
愛の賛歌は日本では甘くロマンチックな歌詞がついてシャンソンの代名詞のようになりましたが、もとはとても過激な歌詞です。
あなたのために盗む、殺す、という唄。
(ちなみにマイ・ウエィもシナトラがポジティブな詞で一斉を風靡しましたが、シャンソンのもとの唄はいつもとなんにもかわらない朝、それであなたは出ていっちゃった。。。という非常にアンニュイな詞。日本でのヒットとはちょい違うもとの唄の背景ってのはあるもんで)。
フランス版の予告では、日本題の「水に流して」がメインに使われています。
私は、こちらの歌のほうが、ピアフという歌手の特徴と、その生き様をあらわしている気がして、その意味では最後がこの歌で終わっていくのは、とてもとても印象的。
Rien! Rien de rien
Non! Je ne regret rien!
Rの発音を巻き舌にしながら激しく、静かに吐き出される
「絶対、絶対、絶対に! 私は絶対に後悔しない!」
そう歌いながら果てていくピアフ。
一人の尊敬される歌手の魂と
その存在に敬意を払いながら心血を注いだ
一人の若い女優の魂が
見事にぶつかりあった手ごたえがずしんと残る映画。
NYでデートリッヒと出会うシーンが秀逸。
デートリッヒとピアフ。
最高に贅沢な再現フィルムだと思います>笑
こんな風に、偉大な歌手の魂と
そこに敬意を払いながら心血を注いだ女優の組み合わせが秀逸なのが
大好きなもう一本のこの映画。
ローズ (2007/07/27) ベット・ミドラー、アラン・ベイツ 他 商品詳細を見る |
27歳で逝ってしまった伝説のジャニス・ジョプリンを、ベッド・ミドラーが演じています。
「水に流して」を歌いながら果てたピアフ。
そして「ローズ」を歌いながら、逝ってしまったジャニス。
歌うために生まれてきた二人の女性は
現実では決して幸福な人生を歩まなかったけれど
でもその魂の叫びが
いま、この時代になっても胸を引き裂かれるような感動をもたらしてくれる。
歌ってすごいなあ、とほんとに思います。
そんな歌のちからのすごさと
さらには
女という存在の底力を見せてくれたのがこの映画でした。
TINA ティナ (2006/01/25) アンジェラ・バセット、ローレンス・フィッシュバーン 他 商品詳細を見る |
ティナ・ターナーの半生を演じたのはアンジェラ・バセット。ティナを上回るとさえ思わせる、パワフルな熱唱ぶりはたいしたもんです。そして何よりも、黒人として、そして搾取される女として、DVに耐える妻として、弱者の場所から自分を取り戻して、自立していくティナの姿が、痛みを伴うすがすがしさで身に迫ってきます。
女は、もろく、弱く
そして強い。
そんなたくさんの心のひだを持つ魂があるからこそ
彼女たちの歌は多くの人の心を動かし続けているのかもしれないなあ、って思います。
歌手の半生を描いた映画はたくさんあるけれど
私は、女として
この3本の映画が大好き!
女性歌手の魂と
それを演じた女優の魂に
心から賛辞を送りたい映画です。
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