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まだまだ知らない世界のこと

あなたになら言える秘密のこと ブエノスアイレスの夜  デビルズバックボーン 僕の大事なコレクション 

私は戦争映画は手にしません。戦争の悲惨さを伝えたいなら、もうそれはいやというほどわかってる。それを知るために、敢えて想像を絶する苦しみや悲劇を「家でDVDを見る」という行為で自分の暮らしに持ち込むのは、避けているんです。
戦争映画で興奮したり、ハラハラドキドキしたくもありません。だから楽しむためにも手にしない。映画はあくまでも、自分の心の世界をちょこっと広げていい気持ちになるためのもの。そのスタンスは変わりがないのです。

ところが、戦争映画ではないと思って観た作品の中で、思わず歴史の残酷な側面を突きつけられて、呆然と立ちすくんでしまうこともあります。

たとえば、これ。
あなたになら言える秘密のこと あなたになら言える秘密のこと
サラ・ポーリー.ティム・ロビンス (2007/08/24)
松竹

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死ぬまでにしたい10のことで一斉を風靡したイザベル・コイシェ監督が、同じく主演にサラ・ポーリーを配して製作した作品。前作の、若くして命を落とす母親が、死ぬまでにしたいことを10書き出して実行していくというストーリーは女性誌などで多く取り上げられることとなり、その余波もあってか、今回のこの作品も同様のプロモーションになりました。
なんたって、あーた。「どんな傷・過去を持っていても、人生には“生きることの喜び”=“スパイス”があることを教えてくれる“ライフ・スパイス”ムービー第2弾」だってよ。傷ついた女性の再生の話、と聞けば若い女性は飛びつきます。私もそうして再生したい! とね。

しかし、後半明らかになっていく主人公ハンナの抱えていた「秘密」は、今の社会に生きる日本人である私たちが想像できる「秘密」の域を大きく超えています。よくもこれを、ライフ・スパイスムービーだなんて言えたもんだね。感性を疑うよ、感性を!!
語りすぎるとこれから観る人の映画の楽しみを奪ってしまうので、この場合は黙して語らず。でも、この映画の背景に深く横たわる“内戦”の部分を、敢えて全面に押し出さず、全編を通して無国籍であいまいな舞台設定をしているところに、この監督の技量を感じます。エキセントリックに主張しないからこそ、深く静かに残酷なのです。

世界の貧困や飢餓、繰り返される戦争の現実を「知らないことは罪だ」と言う人(新聞までもがそう言いやがる>笑)もいるけれど、私は思うんです。「知らないこと」は仕方がないことなのだ。知らずに生きてきた人を誰も責められない。いけないのは「わからないこと」だ、と。
思いがけない歴史の一面を垣間見る映画を、日本の興行会社は単なる恋愛映画、人情映画として売ろうとします。重い歴史を前面に出しても売れない。だからおしゃれに味付けをして、ジャケットも人の気を引くように作ります。でも、パッケージにだまされて、その奥に隠れた現実を見逃しちゃいけない。そう思います。

この映画を観終わって、「誰にでも心に傷を負ってるの。でもそれは再生できる! 心の通い合う人との出会いで、人は生まれ変われるのね」なんて感想を持っちゃいけない。以前から東欧の歴史については本当にわからないことが多いと感じていたので、ちょっとだけ調べています。そうして、映画を通して少しづつ世界が広がっていくって、大切なことなんだなあ、きっと。そう思います。

こちらは、ガエル・ガルシア・ベルナルをエロティックに配して、いかにも気を引く作りでプロモーションされた作品。

ブエノスアイレスの夜 ブエノスアイレスの夜
セシリア・ロス、ガエル・ガルシア・ベルナル 他 (2005/06/24)
アット・エンタテインメント

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主人公のセシリア・ロス(アルモドバル監督 オールアバウトマイマザーでその存在感を見せ付けたベテラン女優です)は、壁越しに若い男性にエロティックな官能小説を読ませ、その声を聞きながらオナニーにふけるという性癖を持つ女性。
中年女性と美少年の倒錯したエロス。ベルナル君がきれい! とかなんとか騒いだ女性も数多くいましたが、これはアルゼンチンで 1976年に起きた軍事クーデターを色濃く背景に残した映画だったのでした。主人公の女性は長期化したアルゼンチンの軍事政権下で、政治犯として拷問を受け、そのトラウマで人との肉体的接触ができなくなっている。その中で、若い男娼との上記のやりとりがあるわけです。
ベルナルのHなシーンが観たい! と手にした映画で突きつけられる、地球の反対側アルゼンチンの現実。その過酷な重さに、映画のイメージは一転していきます。
「えー、なんかそんなことぜんぜん知らないけど、ベルナル君はきれいだったー。このおばさんちょっと怖い」なぞというレビューも垣間見ますが。ぷんぷん。ベルナル君きっかけていいからちょっと関心を持っておくれ!

もうひとつ。知っているようでまったくわかっていなかったのが、スペインの歴史でした。これは映画をみていると、ことあるごとに見え隠れして、そのたびに自分の無知を痛感します。たとえばこれなんかはどうでしょう。

デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション
エドゥアルド・ノリエガ、マリサ・パレデス 他 (2004/12/10)
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ホラーの鬼才ギレルモ・デル・トロ 監督。製作はアルモドバル。スペインの荒野に建つ孤児院を舞台にしたホラー映画(最後はスプラッタも満載>涙)ですが、背景に横たわるスペイン内戦の事情がわからないと、この映画は単なるスペイン製どろどろホラーで終わってしまいます。20世紀のスペインは、まさに激動の歴史がある。でも、私はこのあたりを詳しく知りません。内戦が絶えない地域としてインプットされている国々とは、一線を画した情報だけを受け取って生きてきたのだなあ、としみじみ痛感。
もう少しわかれば、映画を通して見えてくる世界は変わる。そう思うたび、知らなかったことに日々目を向けていくことの大切さを感じます。

最後にもうひとつ。
最近見た映画の中で、一番心にせまる歴史を教えてくれたのはこの映画でした。

僕の大事なコレクション 特別版 僕の大事なコレクション 特別版
イライジャ・ウッド、ユージン・ハッツ 他 (2006/11/03)
ワーナー・ホーム・ビデオ

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主演のイライジャ・ウッドをPOPに配したこのジャケット。そして、この邦題。一見コメディとも思える冒頭からのシーン。主人公のアレックスは、ユダヤ系アメリカ人で、アメリカに住んでいます。彼が故郷のウクライナに旅することから始まるこの映画。
後半見えてくるのは、ウクライナという国が抱えてきた過去の重すぎる歴史と、ユダヤ人という民族の想像を絶する悲しみと絶望です。多くを語りすぎないのが、逆に重すぎる過去を浮き彫りにしていきます。
この思いがけず重いテーマをバランスよく中和しているのが、イライジャ・ウッドのPOPな存在感と、ウクライナ(実際の撮影はチェコでされたそうです)の広大な自然、そしてウクライナの人々の天真爛漫さと、随所に挿入されるロマの音楽。
観終えて、静かな静かな涙が流れました。人間が抱えてきた数々の愚行と悲劇。繰り返してはいけないのに、いまだ世界は同じ人間を大義名分のもとに殺しあっているという現実。

ウクライナ、ユーゴスラビア周辺の歴史については、本当に何もわかっていない私ですが、それでも「知らなくてはいけない」と知らしめてくれたのが、エミール・クストリッツァ監督の一連の作品でした。これはまた今度!

戦争映画は観ない! とこれまで私が思ってきた映画とは、アメリカが作った映画だったのだ、と今改めて思います。
アメリカが戦争を始めたのは、まだ歴史的には日が浅い。ヨーロッパのように、遠い遠い過去から隣国と戦争を繰り返し、自国民を殺され、他国民を殺し、多くの悲劇にまみれた過去と現実を背負いながら成立している国々とは、まったく異質の文化を持つ国。9.11の同時多発テロから昨日で6年が経過しました。崩壊するワールドトレードセンターの風景を痛みを持って思い起こしつつ。それでもやはり、これからも私はアメリカの作る戦争映画は観ないだろうな、と思ったりもします。

まだまだ知らなくてはいけない世界がいっぱいあることを、映画は教えてくれます。少しづつ少しづつ、世界を広げていきたいなと思います。
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コメント

僕の大事なコレクション」は、コメディだと思っておりました。
なかなか深そうな映画ですね。
借りてみてみます

U2を見て!聞いて!

今やリードボーカルのボノが国連で演説し、sirの称号までもらってます。でもそれは今話題の環境問題に取り組んでいるからだけではなくて、アイルランド人として世界平和を叫び続けているから。
ロックンロールという、ポップカルチャーの頂点で仕事をしながら、歌うテーマに常に人と人のつながりを選ぶU2がとても好き。
私は彼らに「ヨーロッパ各地には今もまだドロドロの民族間闘争があるんだよ」と教えられました。日本人ってそれくらい無知なのが標準だと勝手に思っています。
でも、U2の姿を見て、そういうものに目を向ける下地があるので、武蔵野婦人ご紹介の「それってどうなの主義」での「拉致より戦時中の朝鮮人連行の方が巨大な犯罪ではないか」という意見にも一理ある、と素直にうなづけました。
ツアーの中で復興できていないサラエボに巨額の赤字を覚悟してコンサートを出前したり、アルゼンチンではピノチェトに家族を連れ去られた人々を舞台に上げて、家族の名を呼ばせたり、通常考えられないことを本気でやっている人たちなので、聞いてみてください。
そうそう、マルチン・ルーサー・キング牧師のこともU2に教わりました。(って、世界史を知らなさすぎ?)

いい映画ですよ

トモタローさん、コメントありがとうございます! そうそう、この「僕の大事なコレクション」。どうしてこういう売り方をするのだろう? と素直に疑問でしたが、逆に考えれば、こうした売り方をしたことでこの映画を手にする人たちも多いわけですよね。そこで、「知らなかった」ことが「わかるようなる」といいなあ、と思います。とってもいい映画ですよ。ぜひ見てねー!

アイルランドという憂鬱

爆弾猫さん、どもでーす! そうそう、U2はアイルランド代表選手ですよね。彼らの存在でアイルランドの民族闘争をどれだけの若い人たちが知ったか。その功績は大きいと思います。ボーノは最近、ちょっと社会派に走りすぎて、本来のロック魂が希薄になりつつあるのが、武蔵野婦人としてはないものねだりの不満であったりもしますが>笑
ちょうど、このコラムを書いたあと、クストリッツァを通してのユーゴ問題近辺と、U2やUKロックなどを通してのアイルランド問題ってのも取り上げてみたいなあと思っていました。「さらば青春の光」「トレインスポッティング」など、UKの映画では、このあたりに遭遇することがとても多いです。最近みた映画では「プルートで朝食を」が、鮮烈にアイルランド闘争を取り上げていて、ドラアグする女装男性のファンタジーだと思って見たこの映画で、思いがけず重たい現実を突きつけられたばかりでした。
「飢えた子供の前で文学は何ができるのか」と問うて社会運動に身を投じたサルトルではないけれど、映画や音楽って、世界を前に何ができるのかと思うこともあるけれど、小さいけれど大きな力を持っていますよね。
またおいおい、いろいろ取り上げてみたいと思いまーす。コメントありがとうございました!!

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